谷津田の野草



NEC田んぼのある谷津田ですが、手入れが進んで自然が豊かになっています。
四季を通じてみればもっといろいろな野草に会えると思います。
しかし、遠いこともあって谷津田の草取りがあったときに見かけた野草です。
夏の一時期のみに見かけたものですので、ほんの一部のみと思います。



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
イネ目
イグサ科(イグサ)
イネ科(チヂミザサ、ヨシ)
カヤツリグサ科(オニスゲ、カサスゲ)
キジカクシ目
キジカクシ科(コバギボウシ)
キントラノオ目
オトギリソウ科(コケオトギリ)
トウダイグサ科(アカメガシワ、エノキグサ)
セリ目
ウコギ科(オオチドメ)
ツユクサ目
ミズアオイ科(コナギ)
ナデシコ目
ザクロソウ科(ザクロソウ)
ユリ目
ユリ科(ヤマユリ)
谷津田の野草
和名インデックス


イグサ(Juncus effusus var. decipens)
<イネ目・イグサ科・イグサ属>

イグサ科の植物で、標準和名は「イ」。最も短い和名でもある。
湿地や浅い水中に生える植物で、泥の中に根を張る。
ちょっと変わった姿で、先のとがった細い茎が束になったような形をしている。
この茎のようなものは花茎で、本当の茎は地下茎となっている。
葉は、花茎の基部を包む短い鞘状に退化し、葉はないように見える。
花は、花茎の途中から出ているように見えるが、花までが花茎で、その先は苞にあたる。
花序は、短い花柄を持つ多数の小花の集まりで、6つの小さな花弁がある。

2014/7/26
田んぼの畦で見かけたイグサです。
畳表などに使用されるのは、野生のイグサではなく、栽培種のコヒゲ呼ばれる品種です。
野生のものと比較して、花序が小さいのが特徴で、製品にしやすいようです。
この野生種は、まだ、株が小さいのか背が低く、花序もかなり立派です。

チヂミザサ(Oplismenus undulatifolius)
<イネ目・イネ科・キビ亜科・キビ連・チヂミザサ属>

イネ科チヂミザサ属の1年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、温帯から熱帯にかけて広く分布する。
和名は、葉がササに似て、縮れたような皺があることに由来する。
茎は、枝分かれしながら地上を這い、多数の葉を付ける。
秋に、茎の一部が立ち上がり、先に穂状の花序を付ける。
花茎の上部に短い柄が出、その枝に数個の小穂が付く。

2014/7/26
谷津田の横にある斜面林で見かけました。
まだ、花が咲く時期ではないので、葉っぱのみですが、本種と直ぐに分かります。
全ての葉が綺麗に縮れたように波打っていて、和名の由来がよく分かりますね。



チヂミザサの花

     .
2016/8/27
新潟の「胎内自然天文館」近辺で見かけた、チジミザサの花です。
イネ科の花なので、極めて地味な花です。左が開花前、右が開花後の写真です。
小穂からオシベがぶら下がり、ブラシ状のメシベが顔を出しています。

ヨシ(Phragmites australis)
<イネ目・イネ科・ダンチク亜科・ヨシ属>
   
2014/7/26


2015/8/1

イネ科の多年草で、温帯から熱帯にかけての湿地帯に分布する。
ヨシという和名は、「アシ」が「悪し」に通じるのを忌んで、逆「良し」に言い替えたのが定着したもの。
そのため、関東では「アシ」、関西では「ヨシ」が一般名称になっているが、標準和名は「ヨシ」である。
暑い夏ほどよく成長し、地下茎は年に5m以上伸びることもある。茎は2m〜6mの高さになる。

2014/7/26 谷津田横の小川に沿って群生していたヨシです。

2015/8/1 谷津田の奥にある湿地に群生しているカサスゲ、ヨシ、シダです。
この後、この湿地を踏耕によって田んぼに転換する作業を行いましたので、今はありません。
手前の方で、細い葉がたくさん見えていますが、それがカサスゲで、その奥の幅広の葉がヨシです。

オニスゲ(Carex dickinsii)
<イネ目・カヤツリグサ科・スゲ属・真正スゲ亜属・シオクグ節>

カヤツリグサ科スゲ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
根茎は細長く、匍匐茎を伸ばして群生する。
茎頂に小穂が数個集まって付く。頂小穂は雄性で長い柄がある。
雌小穂はその基部に付き、果胞が膨らみ隙間なく付いている。
その先は長いクチバシ状に伸び、とげとげした様子を鬼の角に見立てたのが和名の由来。

2015/8/1
谷津田の横を流れる小川と湿地に生えていました。
雌花が独特なとげとげした形をしているので、見間違えることはまずないと思います。
中央の写真で、2個の雌花の間から伸びているのが雄花ですが、まだ、雌性先熟なので開花していません。
左端の雌花で、棘の先に見える白っぽいものは、3裂したメシベの柱頭です。

カサスゲ(Carex dispalata)
<イネ目・カヤツリグサ科・スゲ属・真正スゲ亜属・ヒゴクサ節>

カヤツリグサ科スゲ属の植物で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州の平地の湿地や池の縁などの浅い所に生育する。
太い地下茎を横に這わせ、水中の泥に根を張って、大きな群落を作る。
葉は、細長く斜上して1m近くになることもある。断面は横に開いたMのような形をしている。
5月〜6月頃に、花茎を1m近く伸ばす。頂小穂は雄性、その下部に複数の雌性の側小穂が付く。
身近に生育する大型のスゲの代表的なもので、菅笠などの材料として利用されてきた。

2015/8/1
谷津田奥の湿地に大きな群落を作っていたカサスゲです。
花の咲く時期は過ぎていたので、葉のみがこれでもかと言わんばかりに茂っていました。
地下茎を横に這わせ、泥の中に根を張っているので、田んぼへの転換作業は大変です。
左端は葉の拡大写真ですが、中央が奥に凹み、その両側が手前に出っ張り、両端が奥に折り返しています。

コバギボウシ(Hosta sieboldii)
<キジカクシ目・キジカクシ科・リュウゼツラン亜科・ギボウシ属>

キジカクシ科ギボウシ属の多年草で、日本の固有種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布し、日当たりの良い湿った草原や湿原に自生する。
根茎に多数の根生葉が付き、斜上する。葉身は15cmほどでの狭卵形で先が尖り、基部は翼状に葉柄に流れる。
花茎の高さは50cmくらいになり、漏斗型の濃紫色から淡紫色の花をやや下向きにつける。
花軸につく蕾が下部から上部へと開花していく。

2015/8/1
園芸品種が出回っているので、ガーデニングなどでご存知の方もいると思います。
花が綺麗な薄紫なので、古くから観賞用に栽培されていたようで多くの品種があります。
この写真のものは野生種で、割りと大きな株になっていました。

より大型のオオバギボウシというのもありますが、コバギボウシほどには見かけません。
オオバギボウシの若葉はウルイと呼ばれる山菜なので、里山などには多いと思われます。

コケオトギリ(Hypericum laxum)
<キントラノオ目・オトギリソウ科・オトギリソウ属>

オトギリソウ科オトギリソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島に分布する。
草丈は数十pになり、茎は四角形で、上部で分枝する。
葉は、長さ1cm程の広卵形で、秋には紅葉する。
花は直径1cmに満たない黄色い5花弁で、オシベは多くても10本程と少ない。

2014/7/26
谷津田横を流れる小川の近くで見かけました。
黄色いかわいらしい花を付けていたのですが、直ぐには名前が分かりませんでした。
後日、いろいろ調べて本種にたどり着きました。



湿地を彩る紅葉(コケオトギリ)

   .
2015/8/23
よく行く新潟の胎内の途中、 加茂市近くの湿地で真っ赤に紅葉した野草を見かけます。
花が咲いていなかったので、こちらも名前が分からずにいたのですが、昨年判明しました。
つまり、本種と判明したのですが、花と紅葉した葉が結びつきました。

アカメガシワ(Mallotus japonicus)
<キントラノオ目・トウダイグサ科・エノキグサ亜科・エノキグサ連・アカメガシワ属>

<アカメガシワの雌花>

<アカメガシワの雄花>
トウダイグサ科アカメガシワ属の落葉高木で、在来種。雌雄異株。
日本では、本州から四国、九州の山野に自生し、空き地などに真っ先に生えてくるパイオニア植物。
日本以外では、東南アジアの山野に分布する。
和名は、新芽が紅色を帯びること、そして、その葉が柏のように大きくなることに由来する。
葉は互生し、葉柄は紅色を帯び、長さは10〜20cm、葉身も同様、葉幅は5〜15cm程でかなり大きい。
初夏に枝先に円錐花序を出し、花弁のない小さな花を多数付ける。
雄花は、苞の脇に数個ずつ付き、多数のオシベが球状に付く。
雌花は、苞の脇に1個ずつ付き、子房には刺状の突起がある。

2014/7/26
アカメガシワは雌雄異株なので、樹によって雄花か雌花のどちらかしか咲きません。
以前から、雌花が咲く雌株を探していて、やっと巡り合えました。
雄株も近くにあったのですが、まだ、開花が始まったばかりでした。

※ 雄花の様子に関しては、こちらをご覧ください。

エノキグサ(Acalypha australis)
<キントラノオ目・トウダイグサ科・エノキグサ亜科・エノキグサ連・エノキグサ属>

トウダイグサ科エノキグサ属の一年草。
日本では、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国で見られる1年草。
海外では、東南アジアから東アジアにかけて分布する。
草丈は50cm程までになり、葉は互生する。
上部に穂状の雄花が付き、その基部に総苞に包まれた雌花が付いている。
雄花の花被は4裂し、オシベは8個ある。雌花の花被は3裂し、花柱は3本で先が細かく裂ける。

2014/7/26
谷津田の斜面林に入る手前の台地にたくさん生えていました。
まだ、成長途中なのか草丈は数十p程しかありませんが、穂状の雄花がたくさん付いていました。
もちろん、その根元には雌花も付いていました。

オオチドメ(Hydrocotyle ramiflora)
<セリ目・ウコギ科・チドメグサ属>

ウコギ科チドメグサ属の多年草で、在来種。
北海道から、本州、四国、九州の山野に生える普通種。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
茎は細く、地を這って広がり、節から枝を出して斜上し、葉腋に花序が付く。
葉は、直径数cmのやや厚みのある腎円形で、表面には光沢がある。
葉の切れ込みは浅く、基部は深い心形。葉の基部には鋸歯がある。
下記の5漢月には、葉の上に長い花茎を出し、淡緑色の小さな花を10個前後付ける。

2014/7/26
斜面林内の通路脇で、葉のみが一面を覆っていました。
もう、花の時期は過ぎているので、花茎はありません。

コナギ(Monochoria vaginalis var. plantaginea)
<ツユクサ目・ミズアオイ科・ミズアオイ属>

ミズアオイ科ミズアオイ属の1年草で、史前帰化植物と考えられている。
日本では、本州から四国、九州、沖縄に分布する、水田の雑草の代表種。
海外では、東アジアに広く分布し、水稲耕作の広がりと共に各地に伝播したと考えられている。
葉柄、葉身とも長さ数cmから数十pと変化に富み、葉の形も多彩である。
総状花序は、葉より低く、5個前後の花が付く。花は、青紫色の6花弁で直径2cmほど。
オシベは6本あり、内5本は短く、葯は黄色い。1本はやや長く、葯は青紫色。
同属のミズアオイが姿を消し、希少種になっているのに対し、本種はあまり減っていない。

2014/7/26
水田に生える雑草の代表種で、この年も田んぼのあちらこちらで見られました。
まだ、花が咲くには少し早いようで、花茎は見られませんでした。

ザクロソウ(Mollugo pentaphylla)
<ナデシコ目・ザクロソウ科・ザクロソウ属>

ザクロソウ科ザクロソウ属の1年草で、道ばたや畑の縁に普通に生える在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布する。海外ではアジアの熱帯、亜熱帯に分布する。
草丈は10〜25cmほどで、茎は4綾があり、よく分枝して斜上する。
葉は、長さ1〜4cmの披針形で、下部では3〜5個が偽輪生し、上部では時に対生し小さい。
花期は7月〜10月で、茎頂や葉腋に集散花序を出し、花柄は細長く、小花柄は2〜4mm。
花は直径3o程で、楕円形で白緑色の花被片5個には1脈がある。
花被片は長さ2mm前後で不揃い。オシベは3個、メシベが1個ある。
刮ハは直径2mmほどの球形で、種子は長さ0.5mmほどの腎形。赤褐色で艶があり、微細な突起がある。
よく似たクルマバザクロソウは茎が丸く、花が葉腋に固まって付く点が異なる。
また、果実は楕円形で、花被片には3脈がある。

2014/7/26
水田に下りる通路脇で見かけたザクロソウです。
永らく同定できないでいましたが、ひょんなことから正体が分かりました。
よく似た帰化植物のクルマバザクロソウがありますが、花の付き方が異なります。

ヤマユリ(Lilium auratum)
<ユリ目・ユリ科・ユリ属・ヤマユリ亜属>

ユリ科ユリ属の球根植物で、日本固有種。
北陸地方を除く近畿地方以北の山地の林縁や草地に分布する。
草丈は1mを超え、頂部に数輪の花を付ける。なお、大きな株では10輪近く咲く場合もある。
花の直径は20cmにもなり、ユリ科の中でも最大級で、その重みで茎が湾曲することもあります。
花弁は、内花被片、外花被片、各々3枚からなり、オシベも6本あります。
花被片は、白地に多数の紅斑があり、花被片の中心に黄色の筋があります。
花の香りは、甘く濃厚で、非常に強く香ります。
球根の鱗片には、多糖類の1種であるグルコマンナンを多く含み、苦みが少ないので食用となります。

2014/7/26
斜面林の通路脇で、大きな花を2輪咲かせていました。
翌年、同じ場所を見たのですが見当たりませんでした。
見栄えの良い花なので、採取さてしまったのかもしれません。ちょっと残念。




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