八ヶ岳山麓 原村近辺の昆虫T



ここ何年か通っている「原村 星まつり」そのの会場である「八ヶ岳自然文化園」やその近辺、
会場への往路、復路で見かけた昆虫をまとめたものです。

ただ、星まつりが毎年、8月の初旬に開催されるため、その時期に見かけた昆虫のみです。
特に珍しいものではありませんが、こんな昆虫類が暮らしているのだと見ていただければ幸いです。

< トピック >

今回、新たに見かけた下記の昆虫を追加しました。
モンシロチョウ、モンキチョウ、オオウラギンスジヒョウモン

今回、新たに見かけた下記の昆虫を追加しました。
ヘリグロチャバネセセリ、トンボエダシャク、クロスキバホウジャク



ここでは、下記の昆虫を掲載しています。
チョウ目・アゲハチョウ上科
アゲハチョウ科(キアゲハ、カラスアゲハ)
シジミチョウ科(ツバメシジミ)
シロチョウ科(スジグロシロチョウ、モンシロチョウ、モンキチョウ)
タテハチョウ科(アサギマダラ、ジャノメチョウ、アカタテハ、ミドリヒョウモン、ウラギンヒョウモン)
チョウ目・セセリチョウ上科
セセリチョウ科(オオチャバネセセリ、ヘリグロチャバネセセリ)
チョウ目・シャクガ上科
シャクガ科(ハラアカヒメアオシャク、ヒメウスアオシャク、トンボエダシャク、ウメエダシャク)
チョウ目・スカシバガ上科
スカシバガ科(モモブトスカシバ)
チョウ目・マダラガ上科
マダラガ科(ホタルガ、ベニモンマダラ)
チョウ目・カイコガ上科
スズメガ科(クロスキバホウジャク)
チョウ目・ヤガ上科
ヒトリガ科(カノコガ)
ヤガ科(ハンノケンモン)
八ヶ岳山麓 原村近辺の昆虫
和名インデックス


キアゲハ(Papilio bianor)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
アゲハチョウ科・アゲハチョウ亜科・アゲハチョウ属>
 
本種は、ヨーロッパからアジア、北米北西部にかけて広く分布し、いくつかの亜種に分かれている。
日本は、北海道から本州、四国、九州まで、全国に分布している。
日本に分布している亜種は、「Papilio machaon hippocrates」とされている。
幼虫は、セリ科植物(セリ、ハマウド、シシウド)を食草とするため、生息地は広い。
また、野菜のニンジン、パセリ、ミツバ、アシタバも大好物なため、農家の方にとっては害虫である。
なお、幼虫は、三齢幼虫まではナミアゲハと同じ黒い体色をしている。
しかし、四齢幼虫では白地に黒と黄色の斑点模様となる。
さらに、終齢幼虫の五齢幼虫になると黄緑と赤い斑点のある黒の縞模様に変わる。
なお、幼虫に触ると頭部と胸部の間から強烈な悪臭を放つ黄色い臭角を出す。
本種は、蛹で越冬するが、-196℃の低温にも耐えられる。

2013/8/3
八ヶ岳自然文化園の観望エリア脇のムラサキツメクサに給蜜に訪れたキアゲハです。
ナミアゲハと比較すると、全体に黄色みが強いです。
この写真ではそれほど黄色く感じないと思いますが、実際に目にすると写真以上に黄色く感じます。
ナミアゲハには黄色みの強い個体もいますが、下記のように前翅の付け根部分の模様の有無で区別できます。


ナミアゲハとキアゲハの見分け方



両者を合成してみましたが、その違いが分かりますか?
ナミアゲハとキアゲハを簡単に見分ける方法は、前翅付け根の模様(赤丸の中)です。
ナミアゲハは縞模様が明確に出ていますが、キアゲハには模様がありません。


カラスアゲハ(Papilio bianor)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
アゲハチョウ科・アゲハチョウ亜科・アゲハチョウ属>
 
2013/8/3             2016/8/6
アゲハチョウ科の蝶で、日本では、北海道から本州、四国、九州と全国で見られる。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
食草(ミカン科のコクサギ、カラスザンショウ、カラタチなど)に左右されるが、基本的に市街地では見られない。
なお、好みではないのか栽培種のミカン科には付かない。
ミヤマカラスアゲハに似ているが、カラスアゲハの翅表面の帯模様は不明瞭なので区別できる。

2013/8/3 ペンション村へ向かう道の脇で、フサフジウツギで給蜜中のカラスアゲハを見かけました。
かなり翅が傷んでボロボロになっています。過酷な自然を生き抜いて来た証なのでしょう。
後翅の赤斑がなく、帯模様も明瞭ではないことから本種のオスとしました。
カラスアゲハは、比較的ゆっくり飛び、翅の光沢のある青緑色からそれと分かります。
2016/8/6 園内から八ヶ岳農場へ向かう橋の上で、水たまりの近くで吸水中の本種を見かけました。
近づくと逃げるのですが、直ぐにまた戻ってきます。この場所が良いみたいでした。

ツバメシジミ(Everes argiades)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
シジミチョウ科・ヒメシジミ亜科・ヒメジジミ族・ツバメシジミ属>
 
シジミチョウ科ツバメシジミ属のチョウで、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と広範囲に分布する。
日本に分布するのは、亜種「Everes argiades hellotia」である。
なお、北海道には亜種「Everes argiades seitzi」も分布する可能性が指摘されている。
海外では、ユーラシア大陸の温帯域に広く分布している。
前翅長は9〜19mmで、翅の表面はオスでは青紫色、メスでは黒い。
翅裏は灰白色で暗色の斑紋があり、後翅の後端にはオレンジ色の斑紋がある。
後翅には尾状突起があり、この突起をツバメの尾羽に見立てたのが和名の由来。
出現時期は3月〜10月と長く、年に4〜5回発生して、幼虫で越冬する。
幼虫の食草は、シロツメクサやハヤズエンドウなどのマメ科の植物の花やツボミ、新芽である。
成虫は、日中に様々な平地の草地を活発に飛び回り、様々な花で吸蜜する。オスは地面でも吸水する。

2019/8/3
八ヶ岳文化園の林内を散策中に、通路脇に咲いていたウツボグサを訪花中の所を見かけました。
裏面を撮りたかったのですが、翅を閉じてくれませんでした。
後翅表面の縁に並ぶ暗色の斑紋とその周りに微かに見える赤い輪郭から本種と判断しました。

スジグロシロチョウ(Pieris melete)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
シロチョウ科・シロチョウ亜科・シロチョウ族・モンシロチョウ属>

シロチョウ科モンシロチョウ属に分類されるチョウで、在来種。
日本を含め、中国東北部、東シベリア、朝鮮半島に分布している。
日本でもほぼ全国でみられる。冬は幼虫で越冬する。
翅脈の周りの鱗粉が黒くなっている点がモンシロチョウとの識別点で、特にメスでは顕著。
モンシロチョウが比較的日当たりのよい草原を好むのに対し、本種はやや薄暗く湿った場所を好む。
春型では翅の裏側翅脈に沿い灰色の筋が見られ、夏型では表面の黒紋が大きくなる。
幼虫の食草は、イヌガラシ、ダイコンなどのアブラナ科植物。

ヤマトスジグロシロチョウとよく似ているが、以下の点で区別可能である。
・前翅中室外側の黒斑が、本種は四角形に近く、ヤマトスジグロシロチョウは円形近い
・春型、夏型ともに前翅裏面中室の黒色鱗粉はヤマトスジグロシロチョウより多い

2012/8/3
富士見高原近くの道路脇で、ヒヨドリバナで給蜜中の所を見かけました。
当初、モンシロチョウと思っていましたが、前翅裏面の模様からスジグロシロチョウとしました。
また、後翅の裏面に黒い筋が見えませんので、オスと思われます。

   
2012/8/4
八ヶ岳自然文化園の林を抜けた所にある小川の近くで見かけました。
上から覗き込むように撮影しましたので、飛翔する姿は上面からの撮影のみです。
産卵する場所を探していたようで、飛び回ってあちらこちらで産卵していました。

前述のオスの後翅裏面と比較してみてください。黒い筋の現れ方が異なることが分かります。

モンシロチョウ(Pieris rapae)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
シロチョウ科・シロチョウ亜科・シロチョウ族・モンシロチョウ属>
 
アゲハチョウ上科シロチョウ科に分類されるチョウの一種で、在来種。
日本(全国)を含め、全世界の温帯、亜寒帯に広く分布する。
広い分布域の中でいくつかの亜種に分かれている。
日本に分布するのは亜種「Pieris rapae crucivora」とされている。
幼虫の食草はキャベツ、アブラナなどのアブラナ科植物で、それらの栽培域の拡大に伴い分布を広げてきた。
日本のモンシロチョウは、奈良時代に大根の栽培と共に移入されたと考えられている。
成虫は3月〜11月頃まで長期間見られ、年に4〜5回ほど発生するが、時期や回数は地域によって異なる。
開長は45〜50mmで、前翅の基部半分ほどが灰白色なのがメスで、オスは翅の付け根のみ灰白色。
オスはメスを探して飛び回るので、長時間飛び回っている個体の多くはオスである。
オスはメスを見つけると交尾しようとするが、交尾済みのメスは翅を広げ、腹部を突き上げて拒否する。
幼虫は、孵化後、4回脱皮して終齢幼虫となり、その後蛹になる。越冬は蛹で行う。

2009/8/7
左は八ヶ岳文化園へ向かう道路脇で見かけた、モンシロチョウの乱舞です。
おそらく、中央にいるメスを2匹のオス(上下にいる)が追いかけているのだと思います。
右は、恋が成就して結ばれたカップルで、近くの菊の葉に留まっていました。
羽が外側になっているのがオスで、内側になっているのがメスです。
この辺りは高原キャベツの栽培が盛んなので、多いのかもしれません。農家にとっては害虫ですが。

モンキチョウ(Colias erate)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
シロチョウ科・モンキチョウ亜科・モンキチョウ属>
 
シロチョウ科モンキチョウ属に属するチョウで、在来種。
ヨーロッパ南東部から、中央アジア、日本や台湾まで分布しており、日本ではほぼ全国でみられる。
日本で見られるのは、亜種(C. e. poliographus Motschulsky)である。
開張は50mm前後、前翅長は23〜26mmで、前翅外縁が黒く、翅の中央には銀色の斑紋がある。
オスの翅の地色は黄色で、メスでは黄色と白色の2種類があるが、白色が圧倒的に多い。
出現時期は3月〜11月で、年に2回発生する。冬は幼虫で越冬する。
食草は、ムラサキウマゴヤシやクローバーなどのマメ科の植物である。

2009/8/9
八ヶ岳文化園の林内を散策中に、通路脇のムラサキツメクサで見かけました。
最初、ミヤマかと思ったのですが、よく見ると普通のモンキチョウでした。

ジャノメチョウ(Minois dryas)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・タテハチョウ科・
ジャノメチョウ亜科・ジャノメチョウ族・ジャノメチョウ亜族・ジャノメチョウ属>
 
タテハチョウ科ジャノメチョウ属の蝶で、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国に分布する。
海外では、ユーラシア大陸の温帯域に分布する。
前翅長は28〜42mmで、開張は55〜70oになる。
翅は表裏ともに茶褐色で、前翅に2個、後翅に1個の眼状紋があるが、黄色い輪郭はない。
幼虫は、イネ科のススキ、スズメノカタビラやカヤツリグサ科のヒカゲスゲなどを食草とする。
年一化性で、出現時期は7月〜8月。越冬は、1齢〜3齢の幼虫で行う。

2010/8/7
八ヶ岳自然文化園の林の中で見かけました。
日本では、良く見かけるチョウですが、見かける場所やその色から蛾の仲間と思っている人もいます。
名前は、前翅や後翅の「蛇の目」の紋様から付いたものです。


2013/8/4
八ヶ岳自然文化園の林の中で、久しぶりに見かけました。
どこにでもいるチョウですが、ここで見かけたのは3年ぶりになります。

   
2014/8/9
八ヶ岳自然文化園の入り口脇にある草地で、イブキジャコウソウを撮影中に飛び込んできました。
給蜜に夢中のようで、近づいても逃げなかったので、じっくりと撮影できました。

アカタテハ(Vanessa indica)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・タテハチョウ亜科・アカタテハ属>
 
タテハチョウ科アカタテハ属のチョウで、日本では、ほぼ全国で普通に見られる。
海外では、インドから東南アジア、オーストラリア、日本まで広範囲に分布している。
前翅長は30〜35o、開張は60〜70oになる。
前翅の先端は黒地に白斑、前翅の中央部には橙色地に黒斑があり、ヒメアカタテハによく似ている。
しかし、後翅は外縁以外が黒褐色で、ヒメアカタテハが前翅同様に橙色地に黒斑がある点で異なる。
冬は、成虫で越冬するが、暖地では幼虫で越冬する事もある。

2012/8/3
富士見高原ゆりの里の駐車場で見かけました。
駐車場脇にたくさん咲いているムラサキツメクサで、給蜜をさかんに行っていました。
アカタテハの名前は、前翅の表側にある鮮やかな橙色の帯模様に由来するそうですが、良く目立ちます。

 
2012/8/4            2012/8/5
2012/8/4 八ヶ岳自然文化園の湿地に咲くサワギキョウに給蜜に訪れていました。
2012/8/5 八ヶ岳自然文化園からペンション村への道で、フサフジウツギで給蜜中のアカタテハです。
夏には個体数が減ってあまり見かけなくなるのですが、この辺りではそうでもないようです。

ウラギンヒョウモン(Fabriciana adippe)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・ドクチョウ亜科・ヒョウモンチョウ族・ウラギンヒョウモン属>
 
タテハチョウ科ドクチョウ亜科ヒョウモンチョウ族に属するチョウの一種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、ヨーロッパから中央アジア、シベリア、中国大陸西部までの温帯域に広く分布する。
夏の草原で見られる一般的な大型ヒョウモンチョウで、後翅裏の銀白色斑が特徴。
前翅長は27〜36o、開張は55〜70oになる。
なお、オスの前翅表にある黒くて太い2本の黒条は、性標である。
他の多くのヒョウモン類と同じく年一化性で、幼虫で越冬する。
食草は野生スミレ類で、成虫は梅雨明けから晩夏にかけて発生する。

よく似たものにギンボシヒョウモンがいるが、翅裏などの特徴から識別できる。
・後翅裏外縁の銀白紋列の内側の褐色紋列(最も分かり易い)
 ウラギンヒョウモンには褐色紋列があるが、ギンボシヒョウモンにはない
・後翅裏前縁に現れる銀白紋のうち外縁の銀白紋列を除いた内側の紋列の数
 ウラギンヒョウモンでは4列あるが、ギンボシヒョウモンは3列しかない
・後翅表の黒色斑の数と大きさ
 ウラギンヒョウモンは、前から小、大、小、大、大の5個
 ギンボシヒョウモンは、前から大、大、小、大、大、小の6個
・オス前翅表の性標である2本の黒条は、
 ウラギンヒョウモンの2本の黒条は太くて明瞭である
 ギンボシヒョウモンの2本の黒条は細くて不明瞭である

2019/8/3
八ヶ岳自然文化園の林内を散策中に、オカトラノオを訪花中のヒョウモンチョウを見かけました。
翅裏を撮りたかったのですが、翅を閉じてくれなかったので種類までは分かりませんでした。
後で、翅表の模様から絞り込んだのですが、縁の模様からウラギンかギンボシに辿り着きました。
よく見ると、前翅に不明瞭ですが性標らしき黒条が見られ、後翅の黒紋の並びから本種としました。

オオウラギンスジヒョウモン(Argyronome ruslana)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・ドクチョウ亜科・ヒョウモンチョウ族・ミドリヒョウモン属>
 
タテハチョウ科ドクチョウ亜科ヒョウモンチョウ族に属するチョウの一種で、在来種。
日本では、関東平野、紀伊半島南部、四国南部、大隅半島を除く日本全土に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国東北部、ロシア南東部に分布する。
出現時期は6月〜10月であるが、暖地では夏眠するので7月〜8月には見られなくなる。
前翅長は34〜43mm、開張は60〜75mmである。
翅裏の模様は、前翅先端の紋は緑褐色で、後翅中ほどに白い帯状の紋がある。その外側は緑褐色。
雌雄差は、オスの前翅表側には3本の性票があり、メスの前翅先端には白い三角紋がある。
幼虫の食草はタチツボスミレなどのスミレ科の植物で、卵か幼虫で越冬する。
近縁のウラギンスジヒョウモンとはよく似ているが、下記の点で識別できる。
・ウラギンスジヒョウモンの前翅外縁は直線的だが、本種は凹んでいて翅頂が尖って見える
・本種前翅先端は暗褐色であるが、ウラギンスジヒョウモンには無いかあっても淡い
・本種後翅表面中央の黒斑は連続しているが、ウラギンスジヒョウモンは切れている
・ウラギンスジヒョウモンの前翅裏面中程にはぼやけた白斑が並ぶが、本種にはない

2009/8/9
八ヶ岳自然文化園の林内を散策中、ノアザミの花で吸蜜しているヒョウモンチョウを見かけました。
良いアングルで撮ることができなかったのですが、なんとは翅表と翅裏が確認できました。
前翅表面に性票が見られますので、まず、オスだと分かります。
後翅裏に白い斑紋が直線的に並んでいるので、ウラギンスジヒョウモンの仲間と判断しました。
前翅の外縁が直線的ではなく、少し凹んでいるのでオオウラギンスジヒョウモンの可能性が大です。
前翅裏面ぼやけた白斑は無いように見えますが、逆光のためはっきりしません。
前翅先端裏面が褐色であると確認でき、この点でオオウラギンスジヒョウモンと判断しました。

ミドリヒョウモン(Argynnis paphia)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・ドクチョウ亜科・ヒョウモンチョウ族・ミドリヒョウモン属>
 
タテハチョウ科ミドリヒョウモン属の蝶で、日本では、ほぼ全国で見られる。
海外ではヨーロッパ〜中央アジア、シベリア、中国、朝鮮半島とユーラシア大陸の温、寒帯に広く分布する。
前翅長は35〜40mmで、開張は65〜80mmになる。
後翅裏面の黄緑色で、外縁と中央に白い縦帯がある。
前翅先端に白斑がないのはオスで、白斑があるのがメスである。
また、オスの前翅表面の中央付近に性標である4本の太い黒条(発香鱗条)がある。
冬は、卵、または若齢幼虫で越冬する。

2012/8/3
富士見高原ゆりの里の駐車場で、アカタテハと共に給蜜しているのを見かけました。
一般には、翅の表側は他のヒョウモンチョウ類と同様に黄色地に黒条や黒斑が並びます。
ただ、一部のメスには、暗色型と呼ばれる翅の表側が暗黄緑色の発色をするものがあります。
この個体は、その暗色型と呼ばれるメスです。

   
2012/8/4
八ヶ岳自然文化園の林を抜けた草原で、見かけたミドリヒョウモンです。
左端の黄色地の個体は、標準色のオスです。
オスでは、前翅中央部に4本の黒条が並び、前翅先端に三角形の白斑がありません。
中央の個体は、暗色型のメスで、前翅中央に暗条がなく、前翅先端に三角形の白斑があります。
右端の写真は、後翅の裏面が黄緑色を帯びているのが分かると思いますが、これが名前の由来です。
なお、前翅先端に三角形の白斑が確認できますので、この個体はメスです。

アサギマダラ(Parantica sita niphonica)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・マダラチョウ亜科・アサギマダラ属>
   
 
タテハチョウ科アサギマダラ属に分類されるチョウで、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布し、標高の高い山地に多くが生息する。
海外でも、朝鮮半島から中国、台湾、ヒマラヤ山脈まで広く分布している。
分布域内ではいくつかの亜種に分かれており、日本に分布するのは亜種「P. s. niphonica」。
開張は80〜100mmになる大型のチョウで、翅の半透明で青緑色の古称であるアサギ(浅葱)が和名の由来。
翅の内側が半透明な浅葱色で、前翅外縁は黒、後翅外縁が赤褐色できれいなグラデーションになっている。
オスの腹端には、へアペンシルというフェロモンを分泌する器官があり、これはマダラチョウ類に共通する。
メスを見つけるとオスはヘアペンシルを広げてメスの周りを飛び回り、メスを引き付ける。
幼虫は、黒地に黄色の斑点が4列に並び、その周囲に白い斑点がたくさんある。
また、前胸部と尾部に2本の黒い角があり、非常に目立ちやすい色彩をしている。
食草は、アルカロイドを含むキジョラン、カモメヅル、イケマ、サクラランなどで、体内に毒を蓄積する。
その毒は、蛹や成虫にも引き継がれるので、他の動物による捕食を防ぐのに役立っている。
前述の幼虫が非常に目立つ配色をしているのは、毒がある事を知らせる警戒色と考えられている。
長年、マーキング調査で、長距離移動する本種の移動が調べられている。
秋に日本本土から南西諸島や台湾への渡りが確認されており、初夏から夏に逆に北上する渡りも確認されている。
本州の太平洋岸の暖地や四国、九州では幼虫で越冬し、春先に羽化したと思われる個体も確認されている。

2017/8/5
八ヶ岳自然文化園の林の中を散策中、目の前にフワフワと現れました。
飛んでいる所を撮影しようとしたのですが、暗くて被写体ブレになってしまい、うまく撮れませんでした。
残念と思ったとき、通路から数十メートル先に咲いていたヒヨドリバナで吸蜜を始めました。
逃げられないようにそっと近づきながら撮影し、最終的には2mほどまで近づいて撮影できました。
翅に傷みがまったく見られないきれいな個体で、性票がないのでメスのようです。

オオチャバネセセリ(Zinaida pellucida)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・セセリチョウ上科・
セセリチョウ科・セセリチョウ亜科・オオチャバネセセリ属>

セセリチョウ科オオチャバネセセリ属の蝶で、日本では、ほぼ全国で見られる。
海外では、ロシア沿海地方、サハリンから朝鮮半島、中国、台湾と東アジアに広く分布する。
前翅長は16〜23mmで、似たものとは、翅の白斑で見分けられる。
出現時期は6月〜10月で、夏から秋にかけて個体数が増える。
幼虫の食草は、タケ科の植物やススキであり、イネは食害しない。幼虫で越冬する。

同じセセリチョウ科のチャバネセセリイチモンジセセリと良く似ており、下記の点で判別する。
●オオチャバネセセリ:後翅に上から短−長−長−短−長と白斑が5つ並ぶ
●チャバネセセリ  :後翅に小さな白斑が一直線に4つ並ぶ
●イチモンジセセリ :後翅に横長の白斑が一直線に4つ並ぶ

2012/8/4
八ヶ岳自然文化園の林を抜けた草原で、ノハラアザミで給蜜しているのを見かけました。
ジャノメチョウ同様、地味な茶色で寸胴な体系から、蛾の仲間と思っている人もいます。

ヘリグロチャバネセセリ(Thymelicus sylvaticus)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・セセリチョウ上科・
セセリチョウ科・セセリチョウ亜科・スジグロチャバネセセリ族>

セセリチョウ科スジグロチャバネセセリ属に分類されるチョウの一種で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシア極東部に分布する。
前翅長は12〜17mmで、開張は25〜30mm。年1回の発生で、活動期間は6月〜8月。
体色は黄褐色。翅裏は黄橙色の地色に翅脈上の黒条が目立ち、翅表は黒褐色の地色に橙色の斑紋が広がってる。
低山地〜山地の草原や樹林の周辺を敏速に飛翔し、ヒメジョオン、オカトラノオなどで吸蜜する。
幼虫はカモジグサ、クサヨシ、ヒメノガリヤス、デキリスゲなどを食べ、幼虫で越冬する。
スジグロチャバネセセリと酷似しているが、注意深く観察すると下記の点で識別できる。
・翅表の前翅に性標があるのはスジグロチャバネセセリのオスで、他のものには無い
・スジグロチャバネセセリのオスでは、前翅の黒褐色の縁取りが翅先に向かって細くなる
・翅表の前翅中室が褐色を帯びるのはメスで、ヘリグロチャバネセセリのオスはやや明るい
 両種のメスでは、翅表の前翅中室の基部側は褐色になる
・両種のメスで、第4室が褐色になるのはスジグロチャバネセセリである
 ヘリグロチャバネセセリのメスでは、第4室は橙色である
・縁毛の色は、ジグロチャバネセセリは黄色く、ヘリグロチャバネセセリ黄白色
また、翅裏が確認できれば、ヘリグロチャバネセセリは縁取りが薄っすら見える。
しかし、翅裏のみでは、ヒメキマダラセセリも薄っすらと縁取りが見え、酷似しているので注意が必要。
ヒメキマダラセセリの場合には、後翅中室に区切り線が見られるので、その確認も必要である。

2019/8/3
八ヶ岳自然文化園の林を抜けた草原で、葉に止まっているセセリチョウを見かけました。
似たものが多いので後で拡大して調べた結果、後翅中室に区切り線がないのでヒメキマダラではない。
翅の縁毛の色が白っぽい点、よく見ると翅表の縁取りが薄っすら見えている点で、本種としました。

 
2009/8/9
オオマツヨイグサの花にセセリチョウが止まっていました。
見た目が似たものがいるので、後で調べてヘリグロチャバネセセリと判断しました。
まず、前翅表面に性標が見られないので、スジグロチャバネセセリのオスではないと分かります。
また、翅表の前翅中室が褐色を帯びておらず、前翅先端が丸くなっているので、オスと判断できます。
消去法になりますが、以上の点からヘリグロチャバネセセリのオスと判断できます。
なお、前翅表面の第4室が橙色である点も、ヘリグロチャバネセセリであることの判断点です。

ハラアカヒメアオシャク(Hemithea beethoveni)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・シャクガ上科・
シャクガ科・アオシャク亜科>

シャクガ科アオシャク亜科の蛾で、在来種。
日本では、本州から四国、九州、屋久島に分布する。出現時期は5月〜8月。
開張は20o前後で、前翅の外横線はやや直線的で蛇行は少なく、内横線も同様。前翅外縁も直線的。
後翅の横線は1本で、前翅同様に蛇行は緩やか。前後の翅に縁毛はあるが模様はない。

2017/8/5
八ヶ岳自然文化園の林内を散策中、青緑色の蛾を見かけて撮影したものです。
アオシャクの仲間であろうことはわかりましたが、種類まではわからず、後で調べて本種としました。
前翅の2本の横線、後翅の1本の横線の波状の曲がり方、翅の外縁の形状などから本種としました。
本種もウスハラアカアオシャク、ホソバハラアカアオシャクなど似た種類が多く、判別には苦労します。

ヒメウスアオシャク(Jodis putata)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・シャクガ上科・
シャクガ科・アオシャク亜科>

シャクガ科アオシャク亜科の蛾で、在来種。平地から低山地にかけて普通に分布する。
日本では、北海道から本州、四国、九州まで、全国で見られる。出現時期は4月〜9月。
海外では、朝鮮半島から中国にかけて分布する。
開張は21mm前後で、鋸歯状のギザギザした波状の横筋が2本あるアオシャクの仲間である。
翅の色は、緑色を帯びる個体と帯びない個体がある。オスの触角は櫛歯状で、メスの触角は糸状。
幼虫は、カラマツ、クマシデ、アラカシ、テツカエデの葉を食べる。

2017/8/5
八ヶ岳自然文化園の林内を散策中、青緑色の蛾を見かけて撮影したものです。
アオシャクの仲間であろうことはわかりましたが、種類まではわからず、後で調べて本種としました。
前翅と後翅に2本のギザギザした横筋があり、前後の翅の形状から本種としました。

トンボエダシャク(Cystidia stratonice stratonice)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・シャクガ上科・
シャクガ科・エダシャク亜科>
 
シャクガ科エダシャク亜科の蛾で、日本ではほぼ全国で見られる。
海外では、朝鮮半島、シベリア南東部から中国にかけて分布する。
年1化で、6月〜7月に出現し、開張は48〜58mmある。
成虫は昼行性で、花の蜜を吸う。幼虫の食草はニシキギ科のツルウメモドキである。
近縁のヒロオビトンボエダシャクと酷似するが、腹部の黄色い模様で区別できる。
本種の場合、黄色い模様は規則的に並んでいるが、ヒロオビトンボエダシャクでは不揃い。

2009/8/9
八ヶ岳自然文化園の芝生広場脇で、ボタンヅルで給蜜中のトンボエダシャクを見かけました。
翅の模様と腹部の黄色い模様は規則的に並んでいる点からの判断です。


2010/8/7
八ヶ岳自然文化園の芝生広場脇で、ボタンヅルで給蜜中のトンボエダシャクを見かけました。
腹部が比較的短めなので、この個体はメスと思われます。
上記のオオチャバネセセリよりカラフルで、昼間に活動するのでチョウらしく見えるかもしれません。

 
2012/8/3            2012/8/4
2012/8/3 八ヶ岳自然文化園へ向かう途中の富士見高原辺りで、ヒヨドリバナで給蜜中の所を見かけました。
なお、羽が細めで、腹部も長いので、この個体はオスの可能性が高いです。
腹部の黄色い模様というか、黒い部分が四角く規則的にきれいに並んでいるのが分かると思います。
ヒロオビトンボエダシャクでは、間隔が不規則で、四角形もいびつになっています。
2012/8/4 八ヶ岳自然文化園の林の中で、葉の上でお休み中の所を見かけました。
上方からの撮影なので、翅の模様がよく分かると思います。
腹部が短めなので、この個体はメスと思われます。


2013/8/2
八ヶ岳自然文化園の林内で、葉の上でじっとしているのを見かけました。
この個体も腹部が短めなので、メスの可能性が高いです。

ウメエダシャク(Cystidia couaggaria couaggaria)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・シャクガ上科・
シャクガ科・エダシャク亜科>

シャクガ科エダシャク亜科の蛾で、出現は年に1回。
日本では、北海道から四国、九州まで、ほぼ全国に分布する。
日本を含め、シベリアから朝鮮半島、中国まで広く分布している。

2013/8/3
八ヶ岳自然文化園の林内で見かけました。
写真を撮った時には、トンボエダシャクだと思っていたのですが、翅の模様が異なります。
それで調べ直して、ウメエダシャクと分かりました。
エダシャクの仲間は、非常によく似ているので、パッと見では種類が分からないものが多いです。

 
2017/8/5
今年見かけエダシャクは、ウメエダシャクばかりでした。
昨年までに見かけたのは1回だけだったのですが、発生時期の関係でしょうか。

モモブトスカシバ(Macroscelesia japona)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・スカシバガ上科・
スカシバガ科・スカシバガ亜科>
 
スカシバガ科スカシバガ亜科に属する蛾の1種で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島に、海外では台湾に分布する。
前翅長は7〜14mmで、開張は、オスで16〜26o、メスで17〜30mm。
翅は細長く、前翅には透明な窓が2個、後翅は外縁以外は透明である。
頭部や胸部は黄褐色の鱗毛が覆い、腹部は黒い鱗毛で覆われ、腹節の後端に白い鱗毛がある。
後肢腿節に白黒茶色の長い鱗毛が密生している。触角は根棒状で、先端が内に湾曲している。
出現時期は6月下旬から8月で、平地〜低山地を中心に広く分布している。
成虫は、様々な花を訪花し、ホバリングしながら吸蜜する。
幼虫は、ウリ科のアマチャヅル、カラスウリなどに虫えいを作って成長し、蛹化する。

2019/8/3
八ヶ岳自然文化園の林を抜けた草原で、オカトラノオにスカシバガが訪花してきました。
吸蜜を始めたので数カット撮ったのですが、その後、どこかへ飛んでいきました。
後で見てみると、長くて毛むくじゃらな後肢が特徴的なスカシバガです。
何種類か同じような後肢をもつものがあったのですが、長さや配色から本種と分かりました。

ホタルガ(Pidorus glaucopis)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・マダラガ上科・
マダラガ科・ホタルガ亜科>
 
マダラガ科の蛾で、日本では北海道から本州、四国、九州、沖縄とほぼ全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾にも分布する。
黒地に赤い頭部と翅の太い白帯模様がよく目立つ蛾で、昼間、林縁などをひらひらと飛ぶ。
触角は櫛歯状で、オスの櫛歯は長くと立派だが、メスの櫛歯は短い。
幼虫はサカキとヒサカキを食草とし、毒針毛は無く、分泌液を出す。
分泌液に触れると、半日ほどして軽い発赤と痒感が現れる。

2013/8/3
八ヶ岳自然文化園の林内で、葉に止まっているホタルガをよく見かけました。
今まで見たことがなかったのですが、ちょうど発生のタイミングにあったのかもしれません。
両方とも触角の櫛歯が短めなので、メスの個体です。

ベニモンマダラ(Zygaena niphona niphona)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・マダラガ上科・
マダラガ科・マダラガ亜科・ベニモンマダラ属>
   
マダラガ科ベニモンマダラ属に属する蛾の1種で、在来種。
日本では、本州亜種は本州の東北地方、関東と中部山地に局所的に分布する。
北海道には、北海道亜種(Zygaena niphona hakodatensis)が分布している。
海外では、朝鮮半島北部から中国東北、シベリア南東部に隔離分布している。
開張は26〜35mmで、前翅は薄い黒地に赤い斑紋があるが、似た蛾は他にはいない。
後翅はほぼ全体が真っ赤で、胸部と腹部の半分は黒く、腹部の尾端側半分は真っ赤。
発生時期は7月中旬〜8月で、河川周辺や林間湿地の日当たりの良い草地に多い。
交尾行動は午後に見られ、メスは高い所に止まっていて、オスはメスを探して草原の上を飛び回る。
オスはメスを見つけるとヘアーペンシルを出し、翅を振るわせながら求愛する。
交尾に成功すると、翌日の早朝まで交尾は続く。
幼虫の食草は、クサフジやツルフジバカマなどのマメ科植物である。
幼虫のとき、マメ科の植物を食べて体内で青酸を合成する能力を持っている。

2019/8/3
八ヶ岳自然文化園の林を抜けた草原で、オオハンゴンソウの花に止まる蛾がたくさんいました。
見るからに毒々しい赤い色の斑紋と、腹部の赤色は警戒色と思われます。
翅の黒い部分ですが、見る角度で色が変わり、右の写真のように金色に見えることもあります。
後で調べると、直ぐにベニモンマダラと分かりました。幼虫は青酸を合成する能力があるそうです。

クロスキバホウジャク(Hemaris affinis)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・カイコガ上科・
スズメガ科・ホウジャク亜科・Hemaris属>
 
スズメガ科ホウジャク亜科の蛾で、在来種。
日本では北海道から本州、四国、九州、沖縄とほぼ全国で見られる。
海外では、朝鮮半島から中国、シベリアに分布する。
前翅長は25mm前後で、開張は48mm前後になる。
出現時期は5月〜8月で、昼行性。翅の鱗粉は羽化後の飛翔で脱落して、外縁に黒褐色の縁が残る。
触角はこん棒状で、胴体は太く、口吻は花の蜜を吸うため長い。
幼虫は4〜9月に現れ、終齢虫では体長は45ミリ前後になる。体色は緑色で、尻端に刺状の尾角がある。
腹面、腹脚、尾角は黒褐色で、尾角には小さな刺状の突起がある。気門は紅色。
幼虫の食餌は、スイカズラ科(スイカズラ、タニウツギなど)、アカネ科(キヌタソウ、ヤエムグラなど)など。

2006/8/5
八ヶ岳自然文化園の林内の湿地に生えるサワギキョウやエゾミソハギで給蜜中の所を見かけました。
翅を激しく動かしてホバリングしながら、長い口吻を伸ばしての給蜜です。
翅を通して足が見えていますが、翅の周辺は黒くて、その中が透明なためです。

似たような翅を持つオオスカシバもですが、羽化直後は翅全体が鱗粉で覆われて不透明です。
しかし、最初の飛翔時に鱗粉が飛んでしまい、このような透明な翅になります。

 
2009/8/9
最初に見た時、てっきりオオスカシバだと思いました。
しかし、何か違うなと調べてみると、体の模様などは似ていますが、翅の不透明部が異なります。
オオスカシバは翅の外縁は透明なのですが、クロスキバホウジャクには黒い縁取りがあります。
写真を見ると、ブレていますが黒っぽい縁取りが見られますので、クロスキバホウジャクです。
なお、腹部側面に明瞭な淡黄色の毛があるので、スキバホウジャクではないと判断しています。

カノコガ(Amata fortunei)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・ヤガ上科・
ヒトリガ科・カノコガ亜科・カノコガ属>
 
カノコガ科カノコガ属の蛾で、出現は6月、8月〜9月の年に2回。
日本では、北海道から本州、四国、九州まで、ほぼ全国に分布する。
日本以外では、朝鮮半島から中国に分布している。
翼開長35mm前後の黒い羽に透明な紋が付き、黒い部分は光の加減で青い金属光沢を放ちます。
胸部は黒く、腹部は黒に黄色の帯模様が鮮やかです。
なお、黄色い帯模様は、背面まであるものが2本、その間に背面に達しないものが2本あります。
本種は、昼行性の蛾で、昼間、給蜜のために花を訪れます。

2017/8/5
八ヶ岳自然文化園の芝生広場脇にある沼の近くで、葉に留まっている本種を見つけました。
昼間は活発に飛び回っていることが多いのですが、葉の裏から全く動いてくれません。
そのため、ご覧のような逆光状態の写真しか撮れませんでしたが、翅の透明部分が良く分かりますね。

ハンノケンモン(Jocheaera alni)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・ヤガ上科・
ヤガ科・ケンモンヤガ亜科>
   
ヤガ科ケンモンヤガ亜科の蛾で、在来種。
日本では、北海道と本州中部以北に分布する山地性のケンモンガ。
海外では、サハリンやロシア、シベリア、ヨーロッパなどに広く分布する。
開張は40mm前後で、全体的に灰褐色で、前翅の後縁付近が暗色。
成虫は地味な色合いで目立たないが、若齢幼虫も鳥の糞に擬態して目立たない。
ただし、終齢幼虫は、黒地に腹節背面に黄色い横帯があり、これ以上ない目立つ配色になる。
幼虫で特筆すべきと特徴は、まばらに生える刺毛で、先端が太い根棒状になる。
幼虫は、ミズナラ、オニグルミ、タカネザクラの葉を食べる。

2017/8/5
八ヶ岳自然文化園の駐車場の通路脇の林縁で見かけました。
地味な体色ですが、根棒状の毛が特徴的な幼虫です。
この根棒状の毛は何かの資料で見た気がするのですが、名前が分かりません。
後で調べたのですが、根棒状の毛はハンノケンモンの幼虫が同じものを持っていることが分かりました。
しかし、幼虫の体色が黒字に黄帯の写真で合いません。他にこの毛を持つものも見つかりません。
困ってしまいましたが、本種は終齢幼虫と若齢幼虫で体色が異なると記された資料を見つけました。
改めて、ハンノケンモンの若齢幼虫を調べ直したところ、特徴が一致し、本種と分かりました。
終齢幼虫で変身するものは他にもいますが、ここまで目立つ配色に変身するとは、ちょっと驚きです。