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スミレ科スミレ属の仲間



スミレ属は、スミレ科に分類される属の1つで、スミレ、パンジー、ビオラなど多くの種が含まれます。
スミレ科は、樹木の方が多いのですが、その中でスミレ属はほとんどが草本です。
非常に変化が激しく、日本では各地に変種や色変りも含めて250もの学名を持つものが存在します。
そのため、北海道から沖縄まで全国に分布し、各地に固有種が存在している状況です。
また、その生育場所も、道端や野原から山奥の渓流のほとり、高山帯など多岐にわたります。

気が付いたら、スミレ属の写真がそこそこ集まっていましたので一覧にしてみました。
といっても、特別なものはなく、散歩中に見かけたものや高尾山などで見かけたものです。

2021/4/1 アメリカスミレサイシン<スノープリンセス>を追加しました。




アメリカスミレサイシン
<パピリオナケア>

アメリカスミレサイシン
<スノープリンセス>

アメリカスミレサイシン
<スノープリンセス>
 
 



スミレ(Viola mandshurica)

スミレ科スミレ属の多年草で、道端などでよく見かける無茎種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国でふつうに見られる。
海外でも、朝鮮半島から中国、ウスリーまで分布する。
葉は、根元から多数出し、細長い矢じり型で、葉柄には翼があるのが特徴。
花色は、普通は濃紫色だが、白花のものもある。
5枚の花弁の内、唇弁の1枚が大きく、2枚の側弁には白い突起毛がある。




平地のそこここで見かける事のあるスミレですが、多摩川河川敷のいつもの散歩コースで見かけたものです。



ニショクアツバスミレ(Viola mandshurica var. triangularis f. bicoloe)

スミレ科スミレ属の多年草で、スミレの海岸性変種であるアツバスミレの園芸選別品種。
本種は、伊豆大島で発見された花変わりのアツバスミレとの説がある。
アツバスミレは、本州房総半島以西から四国、九州の海岸地帯などに自生している。
草丈は7〜15cmで、葉が厚くて光沢があるのが特徴で、海岸近くでは三角状披針形をしている。
しかし、海岸から離れたり、林内などではスミレのようなへら型になる。
スミレ同様に葉柄には翼があり、葉柄と葉身の境界部にはくびれがある。
花期は4月〜5月で、アツバスミレの花は直径20oほどの濃紫色である。
それに対して、ニショクアツバスミレは3個の下弁はおなじだが、2個の上弁が淡紫色になる。
なお、スミレと異なり、側花弁には白い突起毛があったりなかったりする。



境川に向かう途中、国道16号線の歩道で見かけたものです。



ヒメスミレ(Viola inconspicua subsp. nagasakiensis)

スミレ科スミレ属の多年草で、道端などでよく見かける無茎種。
日本では、本州から四国、九州に分布する。
スミレより一回り小型で、花色は濃紫色で、側弁の内側には毛がある。
葉は三角形で、基部がハート型、葉柄には翼がない(スミレにはある)。



平地のそこここで見かける事のあるスミレですが、多摩川のいつもの散歩コースで見かけたものです。



ノジスミレ(Viola yedoensis)

スミレ科スミレ属の多年草で、人里周辺でよく見かける無茎種。
日本では、本州の秋田県以南から四国、九州の低地に分布する。
花色は青味の強い濃紫色で、側弁は無毛。距は濃紫色で細長い。
葉は長三角形からへら形で、葉柄には翼がない。



平地のそこここで見かける事のあるスミレですが、多摩川のいつもの散歩コースで見かけたものです。



アカネスミレ(Viola phalacrocarpa)

スミレ科スミレ属の多年草で、人里周辺でよく見かける無茎種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国の丘陵や低山地にに分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシアに分布する。
花色は紅紫色が多いが、青味を帯びるなど変化が多い。
側弁の内側基部には毛があり、距は長めである。
葉は、いくぶん丸みを帯びた長三角形で、両面に毛がある。



平地のそこここで見かける事のあるスミレですが、高尾山の散策中に見かけたものです。



コスミレ(Viola japonica)

スミレ科スミレ属の多年草で、平地の乾いた草地などで見られる無茎種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布している。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
花色は、淡紫色が多いが、紅紫色のものも稀に見られ、紫の筋が入る。
花弁の幅は狭く、距はいくぶん長めで先は細くならない。
側弁基部の毛は、西日本では毛があるものが多いが、東日本では毛のないものが普通。
葉は、丸みのある長三角形から卵形で、両面とも無毛。裏面が紫色を帯びるものが多い。



人家近くの明るい乾燥気味の所に生育するスミレですが、高尾山を散策中に見かけました。
名前に「コ」が付きますが、決して小さいスミレではありません。花茎も20mm程と普通です。



タチツボスミレ(Viola grypoceras)

スミレ科スミレ属の多年草で、道端などでよく見かける有茎種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国の野原から低山地、亜高山帯まで分布する。
海外では、朝鮮半島から中国南部まで広く分布する。
花色は淡紫色が多いが、変異は多い。側弁は無毛。
スミレやヒメスミレと異なり、成長すると茎が伸び、茎の途中にも葉が付く。
葉は心形で、托葉は櫛の歯状に深裂する。



平地のそこここで見かける事のあるスミレですが、多摩川のいつもの散歩コースで見かけたものです。
なお、右端の群生している写真は、高尾山で撮影したもので、この斜面一面に群生していました。



ニオイタチツボスミレ(Viola obtusa)

スミレ科スミレ属の多年草で、日当たりの良い草地で見られる有茎種。
日本では、北海道南部から本州、四国、九州と全国に分布している。
海外では、朝鮮半島に分布する。
花色は、濃紫色から紅紫色で、稀に淡い色のものもある。花弁の中心部は白い。
側弁基部に毛はない。花は、芳香は強いが、芳香のないものもある。
葉は丸みのある心形であるが、花の最盛期を過ぎると花茎が伸びて長三角形の葉になる。
また、托葉は櫛の歯状に深裂する。



山地の明るい乾燥気味の林内に生育するスミレですが、高尾山の散策中に見かけました。



ツボスミレ(Viola verecunda)

スミレ科スミレ属の多年草で、別名はニョイスミレ。
日本では、北海道から本州、四国、九州、屋久島まで、広範囲に分布する。
海外では、東アジアに広く分布している。
草丈は5〜20pほどで、地下茎はごく短く、地上に根出葉と複数の茎をのばす。
茎は斜上するか横に這い、茎葉は感覚を開けてまばらに付く。
葉身は扁平な心形で、根出葉の葉柄は長く、茎葉の葉柄は短い。葉の縁には粗くて浅い鋸歯がある。
花期は、4月から5月で、葉腋から花茎を立ち上げて、白い花を付ける。
上弁は反り返り、唇弁には青紫色の筋が目立つ。上弁と側弁には突起毛があり、距は短く丸い。
樹林の日陰にならない草地に生え、山間部では人家近くでも見かけるが、市街地では見かけない。



町田薬師池公園 四季彩の杜 南園「町田えびね苑」で見かけました。



アメリカスミレサイシン(Viola sororia)

スミレ科スミレ属の多年草で、アメリカ原産の帰化植物。無茎種。
園芸品種が雑草化した非常に強健なスミレで、湿り気のある林内や草地、道ばたなどで見かける。
国内の分布域は明確ではないが、かなり広範囲に逸脱している。
花色により数種類あり、本種は「パピリオナケア」と呼ばれる品種。
他に白地に紫の筋が入る「プリケアナ」、純白の「スノープリンセス」、
白地に紫の斑点が入る「フレックス」などがある。
花は、直径3cmほどになり大きめ。側弁には毛が密集している。
葉は、心形でいくぶん厚みがあり、若い葉の基部は巻き込む。



最近、旺盛な繁殖力にものを言わせて増えているスミレです。
多摩川のいつもの散歩コースにある神社の境内で見かけたものです。



羊山公園で見かけたアメリカスミレサイシン[スノープリンセス]です。
純白の花弁の基部が、多少、淡黄緑色にを帯び、側花弁の白い長毛が目立ちます。



実家の庭で見かけたアメリカスミレサイシン[スノープリンセス]です。
羊山公園で見かけたものより、花弁の基部の黄緑色が濃く、側花弁の中央が大きく凹んでいます。



アリアケスミレ(Viola betonicfolia var. albescens)

スミレ科スミレ属の多年草。道端などでときどき見かける無茎種。
日本では、本州から四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国東北部、東南アジア南東部、オーストラリアにまで分布する。
スミレと良く似ているが、花色が変異は多いが白色が基調となる点で区別できる。
花色は、白地に少し筋が入るものから、紫の筋の目立つもの、地色に紫を帯びるものまで多彩。
距は、花色と同じく白色で、太くて短いのが特徴。
葉は細長い三角形の披針形で、先端は丸くなる。葉柄の上部には狭い翼がある。



平地のそこここで見かける事のあるスミレですが、多摩川のいつもの散歩コースで見かけたものです。



マルバスミレ(Viola keiskei)

スミレ科スミレ属の多年草で、低山の道端などに見られる無茎種。
日本では本州から四国、九州、屋久島に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、シベリアに分布する。
花径は20mm前後で全体に丸みがある。花弁は白で、唇弁には紅紫色の筋が入る。
側弁に毛はないが、毛があるものは「ヒゲマルバスミレ」とされる。
葉は心形から円形で、葉表よりも葉裏の方が色が淡い。両面に毛がある。

※ 以前、葉や葉柄に毛があるものをケマルバスミレ、少ないものをマルバスミレとしていました。
しかし、毛が少ないものは稀なため、最近は、区別せずにマルバスミレと統一されたようです。



高尾山を散策しているときに見かけました。
葉や葉柄に毛が確認できますので、以前であれば、ケマルバスミレとされたものです。
写真が不鮮明なので明確には分かりませんが、側弁に毛があるようにも見えます。
ただ、明確ではないので、ここではマルバスミレとしています。



エイザンスミレ(Viola eizanensis)

スミレ科スミレ属の多年草で、低山の道端や草原などに見られる無茎種。
日本では、本州から四国、九州の太平洋側に多い。日本固有種。
花径は20mmほどで、花色は白から淡紅色、濃紅紫色まで変異に富む。
花弁は波打つものが多く、唇弁と側弁には紫の筋が入り、側弁には毛がある。
花期、葉は3深裂し、側葉はさら2深裂するので、5深裂しているように見える。
花期には、各裂片はさらに細かく裂けているが、花後には裂け目が少なくなります。
夏葉の頃には、葉自体が大きくなり、裂片に裂け目のない小葉になることも多い。



山地の道端などに見られるスミレですが、高尾山の散策中に見かけました。
葉が裂けているスミレは、本種とヒゴスミレくらいなので区別しやすい。
また、この両種では、ヒゴスミレの方が葉が細いので区別できます。



ナガバノスミレサイシン(Viola bissetii)

スミレ科スミレ属の多年草で、湿り気のある林内、林縁などに見られる無茎種で、日本固有種。
本州関東以西から四国、九州の太平洋側、雪の少ない所に多い。
花径は20mmほどで、花弁は細く、側弁に毛はない。
花色は淡紫色で、白花も比較的多い。側弁と唇弁には紫の筋がある。
葉は、細長い心形で鋸歯があり、長さは8cmほどになります。



山地の湿り気のある日蔭などで見られるスミレですが、高尾山の散策中に見かけました。



オオバキスミレ(Viola brevistipulata)

スミレ科スミレ属の多年草で、積雪量の多い日本海側の山地に広く分布する有茎種で日本固有種。
北海道の南西部から本州近畿地方の日本海側、山地帯から亜高山帯の林縁や草地に分布する。
花色は黄色で、紫の筋が入る。側弁には毛がある。距は短く、ほとんどないに等しい。
根生葉は心形であるが、茎葉は広卵形で、鋸歯がある。



城山のかたくりの里で見かけたオオバキスミレです。
本来の分布域ではないので、おそらく園芸用のものを移植したのではないかと思われます。



ツクシスミレ(Viola diffusa)

スミレ科スミレ属の多年草で、名前の通り九州南部に自生するスミレ。
海外では台湾、中国南部からヒマラヤ、フィリピンに分布する。
地上系は短く、匍枝を盛んに伸ばして新苗を作って広がる。草丈は3〜10cm。
葉は根生して、葉身は長さ2〜5cmのさじ型の鈍頭で、葉縁には鈍鋸歯がある。
葉柄には翼があり、基部に向かった細くなる。托葉は狭披針形で、鋸歯がある。
花期は2月〜5月で、長さ3〜10cmの花柄の先に、直径10mmほどの花を横向きに付ける。
花弁は淡紫色で、中心部分は淡黄緑色。唇弁は小さく、紫色の縦筋が入る。側弁は無毛で、距は短い。
果実は刮ハで熟すと3裂して、種子を飛ばす。



町田薬師池公園 四季彩の杜 南園「町田えびね苑」で、淡紫色の小さなスミレを見かけました。
花色や模様、葉の形状などから調べてみましたが、名前を特定できませんでした。
自宅近くでニショクアツバスミレを見かけて、名前を調べていた時、偶然、ツクシスミレに気が付きました。
ツクシスミレの特徴とよく合います。しかし、分布域が九州南部で合いません。
さらに調べていると小石川植物園では見られると記載されていました。それが分布を広げた?
なお、ツクシスミレより毛深く、花色が濃いとされる、ツクシスミレの亜種とされるヤマツクシスミレがあります。
ただ、花茎が赤みを帯び、毛深いとされているので、その点が合いません。
そのため、分布域は合いませんが、ここではツクシスミレとしました。